2020/11/16
タモキシフェン171日目
ホルモン治療中、加味逍遥散から加味帰脾湯へ変更された経緯
ホルモン療法(ホルモン治療)の副作用を緩和させるため、保険適用で医師より漢方が処方されてる方も多いですよね。
漢方はあくまで気休めと考える医師もいるようですが、私の主治医は「漢方と相性がいい人もいるので試してみましょう」というスタンスです。
体質や症状によって処方される漢方は異なりますが、私は当初「加味逍遥散(かみしょうようさん)」が処方されていました。
加味逍遥散は、更年期障害や更年期障害に似た症状の方に処方される代表的な漢方の一つです。
これはタモ服用前、抗がん剤のパクリタキセルの副作用でホットフラッシュがひどく、その際に処方されたもの。
効いている実感はなかったのですが、飲まないよりはマシかも、と思って9カ月ほど服用しておりました。
しかし、この1ヵ月ほど気持ちの落ち込みが大きく、主治医に相談したところ、漢方を変えてみることに。
そして処方されたのが「加味帰脾湯(かみきひとう)」でした。
さて、名前が似ていますが、一体どう違うのでしょうか?
期待される効果の違いや、また実際に服用してみての感想などをまとめてみました。
加味逍遥散と加味帰脾湯との違い
漢方の加味逍遥散について
女性特有の症状に用いられる代表的な漢方薬、加味逍遥散
加味逍遥散は、月経異常や更年期障害など、女性特有の症状に広く用いられる「産婦人科の三大漢方」のひとつ。
のぼせや発汗、イライラ、不安、不定愁訴などの心身の不調や、頭痛やめまい、不眠などの症状にも使われるとのこと。
「逍遙」とは「ぶらぶら歩く」意味で、「加味逍遙散」もぶらぶらとあっちに行ったりこっちに行ったりする症状に効果があることから付けられた名前だそうです。
漢方においては、「血(けつ)」の不足から「気」が余り、そのたまった「気」が熱に変わって、さまざまな症状を引き起こしていると考えられています。
加味逍遥散は、体の上にあがってきた「気」の熱を下におろして全身にめぐらすことで、たまった熱を冷やすことが期待され、不足している「血」を補うことでバランスを整えていくそうです。
この「血」や「気」という視点は漢方ならではですよね。
加味逍遥散の効能・効果、使用方法
・体力が普通か、普通よりない人向け
・のぼせ感・肩こり・疲れやすい・精神不安・イライラ・冷え症・月経不順・更年期障害・不眠症の症状のある人
加味逍遥散は、交感神経が興奮したことによるイライラや不眠など中高年女性の神経症状によく用いられ、自律神経を調整してイライラやのぼせを鎮めて血行も促進することが期待されるそうです。
1日3回 食前に水または白湯にて服用(食前推奨だが、飲み忘れ場合はいつ飲んでもOK)
主治医は、「ざっくり言うと、比較的やせていて、ほてりが上半身にくる人に処方している」と言っていました。
加味逍遥散の成分
柴胡(サイコ)、しゃく薬(シャクヤク)、当帰(トウキ)、茯苓(ブクリョウ)、蒼朮(ソウジュツ)、山梔子(サンシシ)、牡丹皮(ボタンピ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)、薄荷(ハッカ)
加味逍遥散服用の私個人の感想
私は2020年2月から10月まで9カ月間、服用を続きてみました。
とにかく苦く、飲むことが億劫で飲み忘れもたびたびありました。
この苦さや味は個人差があるようです。
後述しますが、加味帰脾湯は甘さがまろやかで、抵抗なく飲めました。
9カ月間のうちに、パクリタキセルも終わり、タモキシフェンを服用するという治療自体が移行したため、正確な比較はできませんが、徐々に症状はラクになってきました。
当初のホトフラは、もう何も手につかないほど頭が燃えるように熱く、ずっとウチワであおいで口から息を「ふー!ふー!」とはいている状況。生活に支障の出るレベルでしたが、激しい発汗もだんだん少なくなり、9カ月後の今は「カッ」と頭が熱くなるくらいで、汗もあまり出なくなったように感じます。
ただ、これはタモに慣れたからかもしれませんし、秋を迎えて涼しくなったからかもしれません。
・ホットフラッシュ→だんだん楽になって生活に支障のないレベルへ
・関節痛→変化なし。今も痛い
・思考がぼんやり→変化なし。今も頭の回路のめぐりが悪い
・イライラ→もとからあまりなし
・頭痛→もとからあまりなし
・落ち込み→当初あまりなかったが、8カ月目ごろから酷くなる(漢方を変更するきっかけ)
・不眠→今まで眠れていたが、8カ月目ごろから目がギンギン冴えて眠れない日も出てきた
ホトフラの症状の軽減など、加味逍遥散のおかげかどうか確証はありませんが、私としては「まあ、身体に悪いものを入れているわけではないから飲んでおこう」というスタンスでした。
しかし、8カ月目ごろに自分でもびっくりするほど急に「ずーーーーーん」と気持ちが落ち込む日があり、不眠も続いたことから、なんじゃこれは!?と驚いて主治医に相談しました。
主治医によると、「ホルモン治療中の患者さんによくあることなので、漢方を変えてみましょうか」と提案され、加味帰脾湯へ変更することになりました。
漢方の加味帰脾湯について
加味帰脾湯はちょっとマイナーな漢方なんだろうか
この1ヵ月は気分の落ち込みが大きく、「このままホルモン療法を続けていっていいのだろうか」と治療の意欲さえなくなるレベルで、詳細を主治医に伝えたところ、「ホルモン療法中の患者さんによくあることなので漢方を変えてみましょう」とのことでした。
この何とも言えない喪失感は自分だけではない、という専門家の言葉は、少し気が楽になるように感じました。
心療内科につなげてもらうことも考えていましたが、ひとまず次の漢方に望みをつなぎました。
とはいえ、乳腺外科が専門の主治医は、漢方にそれほど詳しいようではない様子で、ツムラの漢方手帳(辞典というよりまさに手帳サイズの小さなもの)をチェックして「ふむふむ・・・」と言いながら、加味帰脾湯の説明をしてくれました。
加味逍遥散が処方されたようなサクッとしたメジャー感はなかったので、加味逍遥散に比べるとそれほど使用されることが多い漢方ではなさそうです。
そして、処方箋をもって薬局に行くと、薬剤師さんが「在庫がないので翌日配送の手配します」と申し訳なさそうに伝えてくださいました。人気の漢方だから在庫切れというより、マイナーだから常備してない、という感じでした。
効果・効能、使用方法
・体力が普通か普通より少ないの人向け
・心身が疲れ、血色が悪い、貧血、不眠症、精神不安、神経症の症状のある人
・寝汗、微熱、熱間などがある場合
漢方において、「気」から生じる熱(エネルギー)を鎮めることで眠りにつきますが、このとき「血(けつ)」が足りていないと、熱を十分に鎮めることができません。
このため、起きている状態(昼)と寝ている状態(夜)の区別がつかず、眠りが浅くなってスッキリしないということになるそうです。
「加味帰脾湯」によって、足りない「血(けつ)」を増やし、不眠を改善して気持ちを落ち着かせることが期待されます。
1日3回 食前に水または白湯にて服用(食前推奨だが、飲み忘れ場合はいつ飲んでもOK)
主治医は、「ざっくり言うと、ホルモン療法の副作用で眠れないっていう患者さんに出すことが多い」と言っていました。
加味帰脾湯の成分
黄耆(オウギ)、柴胡(サイコ)、酸棗仁(サンソウニン)、蒼朮(ソウジュツ)、人参(ニンジン)、茯苓(ブクリョウ)、遠志(オンジ)、山梔子(サンシシ)、大棗(タイソウ)、当帰(トウキ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)、木香(モッコウ)、竜眼肉(リュウガンニク)
(「帰脾湯」に「柴胡(さいこ)」と「山梔子(さんしし)」を加えた処方)
加味帰脾湯(かみきひとう)の私個人の感想
味が甘く感じて飲みやすく、眠りも深くなったように思います。
しかし、少し落ち着いていたホットフラッシュがまたぶり返してきました。
飲み始めてまだ2週間のため、たまたま気候によるものかもしれません。
ただ、「飲みやすい漢方」であることは、毎日3回の服用の心理的負担がぐっと軽くなります。
「身体に合った漢方は飲みやすいもの」という俗説もあることだし、3カ月は続けてみようと思います。
(黒太字が加味帰脾湯に変更してからの感想です)
・ホットフラッシュ→だんだん楽になって生活に支障のないレベルへ→再びホトフラ10回/1日、特に睡眠時にホトフラで目が覚めること数回、その後にコールドフラッシュがくる。タオルで汗をふく必要がある。
・関節痛→変化なし。今も痛い
・思考がぼんやり→変化なし。今も頭の回路のめぐりが悪い。→少しクリアになってきた
・イライラ→もとからあまりなし→少しイライラする
・頭痛→もとからあまりなし
・落ち込み→当初あまりなかったが、8カ月目ごろから酷くなる(漢方を変更するきっかけ)→少し改善したように感じる
・不眠→今まで眠れていたが、8カ月目ごろから目がギンギン冴えて眠れない日も出てきた→眠りやすく、眠りも深くなった(が、ホトフラで目覚める)
タモキシフェンと漢方について、今後の見通し
加味逍遥散と加味帰脾湯を比較してみた結論
加味逍遥散と加味帰脾湯は、それぞれ別の良さがあり、どちらか1つで完璧にラクになるわけではありませんでした。
私の体質において、加味逍遥散が得意なところ、加味帰脾湯が得意なところが別のようなのです。
効き目がまだら模様のよう、といった感じでしょうか。
そのため、どの症状を改善したいのか、という優先順位を私のなかで明確する必要があるように感じました。
どの副作用も耐え難いのですが、漢方を変えるきっかけになった「気持ちの落ち込み」に作用させることが最優先なため、
とりあえず、このまま加味帰脾湯を数カ月は続ける予定です。
漢方服用で医師から注意されたこと「自己判断で漢方を組み合わせないこと」
加味逍遥散と加味帰脾湯、それぞれ良いところがあるならば、両方飲めばいいじゃん!と単純に思うところですが、医師からは「成分が重なるので、飲むならばどちらか片方だけで」としっかり釘を刺されました。
調べてみると、漢方だからと安心できるものではなく、自分の判断で組み合わせて飲むことは副作用が出ることもあるそうです。
以前は、葛根湯と別の漢方や処方薬を自己判断で併用していましたが、かなり反省しました。
生薬の入ったサプリメントなどもあるので、飲用する際は医師・薬剤師への相談が必要ですね。
化学療法・ホルモン療法において、漢方について相談するには
同じ乳がん患者さんで、抗がん剤治療(化学療法)やホルモン治療(ホルモン療法)による副作用を和らげる漢方について話題にあがることが多いです。
その際感じるのは、効き方は本当に人それぞれということ。
体質が異なるので当然ですが、それでも誰かが効いたものを試してみたくなる気持ちはあります。
私も、気になったらすぐ変えて試してみたい性格なのですが、ぐっと我慢して主治医に相談するようにしています。
ただ、主治医は漢方について専門というわけではないので、今後漢方を変える際には、別の窓口で尋ねてみるのも1つの方法だと思います。
・まず主治医に相談してみる(←大原則)
・漢方外来で相談していみる(←総合病院や個人病院の中には、漢方に詳しい医師が相談にのってくれる枠あり)
・漢方薬局で調合してもらう(←保険外で高額になる可能性大だが、中医学をもとに体質に合わせてオリジナルの漢方を作ってもらえる)
副作用との付き合いは私の場合これから10年と、長いものになりますので、「もし困ったら、次の手がある」「これで無理なら、別の相談の仕方がある」と準備しておくだけでも、気持ちがラクになるものですね。
余談になりますが、薬膳の資格のもつ友人が「その症状は薬膳での『うるおい』不足だから、きっと加味帰脾湯は合っているんじゃないかな」と話してくれました。
この1年はがっつり標準治療で、ゴリゴリの西洋医学のアタマだったので、ちょっと新鮮で嬉しい言葉でもありました。
標準治療からブレない範囲で、薬膳のような東洋医学的な食事からのアプローチも勉強してみたいなあと思いました。